航空危険物の定義や分類、航空輸送時の環境などについて解説します。
航空危険物の定義
危険物とは、「健康」「安全」「財物」「環境」に危険を及ぼすおそれのある物品・物質で、「航空法施工規則(国土交通省令)」により規定されているもの、またはその告示に従って分類されるものを言います。
- 健康
人が病気になったり、なくなったりするおそれのあるもの
- 安全
航空機の乗務員やその業務、機体に影響するおそれのあるもの
- 財物
他の貨物や航空機の備品に影響を及ぼすおそれのあるもの
- 環境
自然環境を汚染するおそれのあるもの
危険性の分類
危険物は、具体的に下記の10種の危険性に分類されます。
具体的に商品も記載しておりますので、参考にしてください。
- 火薬類
熱・衝撃などにより急激な燃焼反応をおこす物質
(花火、クラッカー、爆竹、弾薬など)
- 高圧ガス
引火性ガス:熱、衝撃、光が加わると爆発するガス
その他のガス:引火性及び毒性以外のガス
毒性ガス:生命体が触れたり吸引すると害のあるガス
(ガスボンベ、ガスライター、ヘアスプレー、制汗剤、一酸化炭素など)
- 引火性液体
引火性蒸気を発生させる液体、液体混合物、溶液又、懸濁液の形で固体を含む液体
(塗料、接着剤、香水、マニキュアなど)
- 可燃性物質類
可燃性物質:着火した場合に燃焼が継続する物質
自然発火性物質:自然発火する性質を持つ物質
水反応可燃性物質:水と作用して引火性ガスを発生する物質
(マッチ、リン、硫黄、活性炭、竹炭、カルシウムなど)
- 酸化性物質類
酸化性物質:他の物質を強く参加させる性質を持つ物質
有機過酸化物:発熱を伴う分解や自己加速生分解を起こすことがある物質
(漂白剤、過酸化水素水、油絵具など)
- 毒物
毒物:生体組織に損傷、機能障害を起こさせる、死亡させる作用をもつ物質
病毒を移しやすい物質:病原体を含有する物質
(殺虫剤、農薬、消毒剤、検体、医療廃棄物など)
- 放射性物質等
自然放射能の平均以上の放射能をもつ天然物質及び人工物質
(医療用アイソトープなど)
- 腐食性物質
生命体の組織と接触すると化学反応によって深刻な損傷をもたらす又は他の貨物若しくは運搬手段に損害を与えうる物質
(液体バッテリー、鉛蓄電池など)
- その他
上記に分類されないけれど健康・安全・財物・環境に危険を及ぼす恐れのある物質
(ドライアイス、リチウム電池など)
- 凶器(内国に限る)
鉄砲・刀剣など他人を殺傷することができるもの
(鉄砲、刀剣、未梱包の包丁)
手荷物と貨物の違い
窓口や集荷で「内容品により航空搭載できません」と伝えると、「手荷物では大丈夫なのに?」と言われる事が多々ありますが、手荷物と貨物では許容される範囲が異なります。
例えば、ヘアスプレーは郵便・貨物では高圧ガスを含むために航空搭載できません。
しかし、機内持ち込みであれば2リットルまたは2kg以内で、噴射弁が偶発的に押されて中身が漏れるための措置(キャップ又は適応は方法)がしてあるものであれば機内持ち込み可能です。
航空機に持ち込みができるからといって、郵便物・貨物として航空搭載可能ではないです。
「手荷物として預けられるもの=郵便物・貨物で航空搭載可能なもの」ではありませんので、くれぐれもご注意ください。
上記のように同じものでも航空搭載対応に差がでるのは、飛行機内の輸送環境の違いだと言えます。
航空機貨物室内の輸送環境
航空輸送でも機内と貨物室内では輸送環境が全く違います。
例えば、気圧を比べてみます。
地上を100%だとすると、機内は約75%、貨物室内は約25%しかなく、貨物室内だと減圧によって液体内容物の放出や容器破裂の危険・リスクが高いと考えられます。
仮に飛行中の航空機貨物室内で液体内容物の放出・容器破損・発火などとなれば、取り返しのつかない事態へと発展します。
上記のような事態にならないために、航空機貨物室内の輸送環境に適していない荷物を航空機に搭載させないという航空危険物対策が重要です。
他にも温度、湿度など、地上と比べると輸送環境が大きく異なります。
まとめ
航空機という他の輸送手段と比較して特殊かつ過酷な輸送環境の下における輸送途上の事故を防止し、航空機の安全運航するために、郵便局は航空危険物対策に力をいれています。
窓口で荷物を出す際に品名を細かく聞かれたり、内容品が不明確だと郵便局から電話がかかってきたり、すごく面倒だと感じた事もあると思いますが、航空機の安全運航するためにやむを得ないのでご理解いただければと思います。
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