先日「郵便局幹部2人が切手着服し、5億4000万円を換金」した事件がありましたが、氷山の一角だと思います。
別納切手を利用した不正のカラクリ解説します。
切手着服5億円事件
東京都内にある2カ所の郵便局の幹部職員2名が、「料金別納」郵便の支払いで使用された切手をそれぞれ大量に持ち出し、金券ショップで換金し、計約5億4千万円に着服した事件。
郵便局幹部2人が切手着服、5億4000万円を換金 https://t.co/93acjWG50X
— 藤田行政書士総合事務所 (@fujix0828) November 2, 2019
この事件のカラクリを元郵便局員が解説します。
事件の問題点
この事件の最大の問題点は、「料金別納」と「幹部職員」の2点です。
一般の外務職員は、現金管理機という機械で、個人がその日に取り扱った現金・切手・証紙など1円単位に管理されていて、1日の業務終了後に1円でも足りなければ大問題になるので絶対できません。
実際、少し前に京都で起きた「委託職員行方不明事件」でも、釣り銭の使い込みを恐れての事件だったと言われています。
京都のゆうパック不明配達員から考える日本郵便の現状
そのくらい厳しく管理されているので、一般の外務職員では到底できる事件ではなく、一部の「幹部職員」しかできない事件です。
料金別納切手払い
料金別納郵便の料金を支払うには、一般的に「現金」「切手」「証紙」「小切手」で支払いできます。
実際、料金別納の料金を切手払いされる事業者も多く、利用者が多い理由としては料金が現金より安くなるからです。
切手は、金券ショップに行けば通常より少し安く買う事ができますので、大量に出せば出すほど切手で支払ったほうが安くなります。
例えば100,000円分の郵便料金を支払う場合、現金だと100,000円ですが、切手だと金券ショップで額面の90%くらいで購入できる店もありますので、90,000円で100,000円分の切手を買って、郵便料金の支払いに使えば実施的に10,000分の費用削減になります。
ただ、現在は下記のような変更があったので、以前に比べたら超大口の別納切手払いの引受けは少なくなっていると思います。
2019年1月1日より料金別納の一部サービスで切手払いが不可になります
幹部職員
ニュースを見る限り、芝郵便局(東京都港区)で総務部課長だった40代男性、神田郵便局(東京都千代田区)で郵便部課長代理だった50代男性とあります。
この事件が起きるには、「総務」がポイントになります。
詳しくは端折りますが、通常は外務・集荷の1日の業務が終わると日中の業務をまとめます。
その際に、現金・切手・証紙などもまとめますし、切手なども精算調書とともに管理者に提出します、その後管理者は精算調書と実際の切手額などを照合し、総務に引き継ぎます。
最終的に総務でチェックしますので、通常であれば「総務」で確実にバレますが、逆にチェック後に総務部の細断処分を実行する立場の人が持ち出せば、ほぼ完全犯罪レベルなわけです。
局によってやり方が違うので、一概に全てが上記の流れとは言い切れませんが、普通であれば預かった切手をコピー用紙などに張り付け、管理者が総務に渡す前にローラー(消印)を行う場合もありますし、現金管理機がなくて手動で計算する場合もありますので、対応が局により異なります。
まとめ
郵便局員が切手横領し金券ショップで換金→金券ショップで売られている安い切手を企業が購入→企業は安く買った切手を郵便料金に利用→(以下ループ)